ターニングポイント’98
人生には、いくつかのターニングポイントがある。僕にもたくさんあったし、きっと今後もあり続けるのだろう。さてみんなは、自分のターニングポイントをいくつ覚えてるかな?僕がいつも言うのは、「ブルーハーツと出会った」だの「ギターを始めた」だのっていう、わりとかっこつけたものだ。ところが、今日とある出来事があり、僕の人生で最も重要かもしれないターニングポイントを思い出した。それでは、時を少し戻そう。バイツァ・ダスト発動!
―1998年 K高校―
僕、PINKYは16歳、高校二年生。この年の春、僕はメガネをコンタクトに変え、ちょっと遅れた「高校デビュー(今で言う「脱オタ」)」を果たした。今でも付き合いのある友達はこの年にできたし、人生初デートをしたのもこの年だ。ここで、僕の人生のターニングポイントとなる、ある事件を引き起こす人物が登場する。その子は、「○コちゃん」というあだ名の女の子。彼女は、今で言うギャル(当時は「コギャル」と言いました)で、しかも他校の男子生徒と不順異性交遊をしている、という噂が立つほどのヤンキー風ギャルだった。脱オタしたとはいえ、僕はヤンキー風の彼女にはまだまだビビっており、時々チラリと見せる彼女の純白パンティをチラ見するだけの、ほんとに遠い間柄だった。お互いに名前を呼んだこともないし、今後も呼ぶつもりもなかった。
ところが!狭い学校内、突然、彼女の名前を呼ばないといけない機会、いや、危機が訪れた。「脱オタしたばかりの僕が、ヤンキーである彼女をなれなれしくあだ名で呼んで大丈夫だろうか?」と一瞬ためらったが、僕は思い切って彼女をあだ名で呼んでみた。今まで会話をしたこともなかったのに、だ。
「○コちゃん!」
彼女は振り向いた。そして、声の主が僕であることを確認した後、彼女はこう言った。
「(アンタ如きが)何、『○コちゃん』とか呼んでんのよ!」
この瞬間、時間にして1秒もなかったと思うが、とにかく、僕の頭は真っ白になった。
「やっぱり僕は、ヤンキーから見ればまだまだオタクなんだ!」
と。ところが、僕は何も悪びれずに、むしろギャグっぽく彼女のあだ名を連呼した。
「○コちゃん!○コちゃん!」
これを聞いた彼女は、濃いメイクの中から少し微笑んだ。この日を境に、彼女とも少しずつ話すようになり、僕には自信がついていった。「もうヤンキーだって対等だぜ!」と。
―とまあ、長々と昔話をしてしまったが、なぜ、こんな些細なことが僕の人生のターニングポイントになったか。それは、もし、あのとき「○コちゃん!○コちゃん!」と返せずに、うつむいてしまったり目を逸らしてしまったら、きっと今の僕はなかったからだ。自信を無くした僕は、きっとオタクに逆戻りし、ギターもバンドもやることはなかっただろう。2年遅れてまで大学にいくこともなく、きっとニートになっていただろう。大学に行かなければ、当然、留学に行くこともなかっただろう。留学に行ってなければ、わざわざ23歳のときに免許合宿に行くこともなかっただろう。そして、あの年に免許合宿に行かなければ、そこで知り合った女の子と合コンもやらなかっただろう。そして、あのとき合コンをしてなければ、きっと・・・・!!
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全てはあの日、「○コちゃん!○コちゃん!」と返したことから始まったのだ・・・・。
―2006年 東京本社―
今日、みんなは名前で呼んでいるが、僕はまだ「名字に『サン付け』」で呼んでいるパートさんを、僕も初めて名前で呼んでみた。もう相手の反応にビクビクする僕はいない。彼女はにっこりと笑ってくれた。そのとき、フッと「あの日のこと」を思い出した。今日も誰かの一言で、小さく歴史は変わっている。
とまあ、かっこつけて書いてしまいましたが、意外と人生のターニングポイントなんて、他人から見ればつまらないことだったりするんじゃないかな。それを「あーだこーだ」かっこつけて言うのは個人の自由だけどね(笑)。
※9月13日 伏字修正完了