in my life

趣味についてひたすらアウトプットしていきたい

島耕作への道 ~第百二十二歩目・憂鬱の現場勤務編その8~

「同期が来なくなった」 地獄の現場では、誰か一人欠けただけでもキツイというのに、何でもできる同期が来なくなったのだ。前にも書いたが、ウチの現場の小型機は僕と同期の二人で回している。最近は年末ということもあり、すさまじい機械稼働率で、もちろん定時に帰れることなどない。そこで、僕は同期である彼にある提案を持ちかけたのだ。 「明日一緒にサボんない?」 彼は即座にこう答えた。 「すごい心揺れるけど・・・・今は頑張ろうよ 僕は自分自身がとても恥ずかしくなった。そして、「じゃあコイツと心中だ」と思い、頑張る決意を固めた。ところが翌日、 「当の本人である彼が休んだ」 のだ。もうね、これには呆れた。何に呆れたって、もちろん彼にもだが、それ以上にコイツを信じようと思った自分に呆れた。考えてみれば、コイツには何度となく裏切られ(無断欠勤され)、何度となく許してきたのだ。そう簡単に人間は変わるものではない。でもさ、マラソン大会で「一緒に走ろうぜ」と持ちかけといて裏切るのとはわけが違うだろ・・・・。 そして、現場に一人残された僕は、事情を知らない次長らに怒鳴られ、ろくに機械操作もできない管理部の連中には嫌味を言われ、バカな外国人作業者にはつまらない文句を言われ、ほとんど泣きそうになりながら仕事をした。頼りの大型機の先輩方も、忙しすぎて僕を手伝ってるヒマはない。それでも、スーパーマンのように、ピンチのときには必ず駆けつけてくれたが。そして、ようやく夜勤の連中が来て、ヘトヘトになりながら引継ぎを行えば、全然仕事が進んでないことを罵られる。 ―もうね、ほんと嫌になったよ。ドMの極地だよね。会社、どんだけSなんだよ?っていう(苦笑)―それでも、次の日にはなぜか律儀に会社に向かう僕。そして、またも同期が来ないことを悟り、出勤して30分後には絶望のどん底へ。こんなことが3日続いた。帰りの車の中では、「どうして僕ばっかり苦労して、僕ばっかり怒られなきゃいけないんだ?」と、悔しいやら悲しいやらで毎日泣いた。そして昨日、同期がついに出社した。 「次にコイツに会ったら、クビになってもいいからボコボコにしてやる!」 と決めていたのだが、コイツは死人のように青白い顔をしていた。きっと、もう限界なのだ。坊ちゃん育ちで根性ナシのコイツは、もう現場に耐えられないのだろう。そう思ったら、握り締めた拳からも力が抜けた。いつもどおり、僕は「おはよう」と声をかけた。彼はうつむいたままこう言った。 「ほんとにごめん・・・・でももう限界で いつもの謝罪の言葉だ。彼を張り倒してもよかったのだが、ここは寛大な心を見せて笑顔で彼を迎える僕。みんな、見ててくれたかなあ?将来の部長候補がここにいますよ!(笑)―そして、 「お前がいない間に仕事溜まっちゃったからさ、頑張ろうぜ! とアツく持ちかける僕。ところが次の瞬間、彼から信じられない言葉が!! 「・・・・おれ、部長に部署変更を願い出たんだ。却下されたら辞めると思う」 僕は頭が真っ白になった。逃げることを選択した彼に怒ったわけではない。僕の中に沸き起こった感情は怒りではなかった。 「寂しい」 そう、こいつにはさんざん苦渋を舐めされられたが、それでも同じ戦場で頑張ってきた、たった一人の同期なのだ。よく一緒にメシも食いに行った。映画やマンガの趣味が合う僕らは、会社のツラさも忘れるくらいに語り合った友達だった。 彼のサボり癖は、他の部署にまで広まっている。おそらく部署変更は通らないだろう。退職した彼とはもう会うこともきっとなくなる。そう思うと、ひどく寂しくなった。力石が死んだ後に、実は彼が友達だったことに気づいたジョーの気持ちが理解できた僕でした。 <追記> 書いてなかったけど、小型機チームのうちの一人、工場長の甥っ子はすでに辞めました(苦笑)。